開業届とは???
開業届とは、個人事業主やフリーランスとして事業を開業したことを税務署に申告するための書類です。正式名称は「個人事業の開廃業届出書」といいます。
開業届は税務署への開業の知らせ
個人事業主やフリーランスになると、事業から発生した利益に所得税が課されます。
事業規模が大き場合は個人事業税や消費税など、所得税意外にも税金を納めなくてはいけません。
税金は税金の種類によって納付先が異なります。
所得税・消費税は国税として税務署に、個人事業税は地方税として各都道府県税事務所に納めます。
そのため、開業届を提出することで、それぞれの税務当局に対して、個人事業主やフリーランスとして開業をしたということを報告する必要があります。
開業届を提出するメリット
開業届を提出しなくても特に罰則はありませんが、提出することによって受けることができるメリットもあります。
開業メリット1:青色申告ができるようになる
開業届を提出する最大のメリットは、節税効果の高い青色申告で確定申告ができるようになることです。事業で売上や利益があれば、確定申告をしなくてはいけません。
確定申告には、簡単にできる「白色申告」と、簿記のルールで帳簿をつけるとできる「青色申告」があります。「青色申告」をすると「所得」から65万円引いた額に税金がかかるので、税金が安くなることがあります。
青色申告をするためには、青色申告承認申請書とあわせて開業届を提出することが義務付けられています。つまり「開業届」を提出することで「青色申告」ができるようになり、節税効果があります。青色申告か、白色申告か、開業時に悩む方も多いですが、どちらを選べばよいか後ほど、記載いたします。
開業メリット2:屋号と銀行口座
開業届には屋号の記入欄があります。法人でいうところの会社名です。
「株式会社」など「会社」という単語は使えませんが、店舗名を「屋号」として使うことができます。開業届を提出すると屋号で銀行口座を作成することができます。
銀行によっては口座開設のための必要書類は異なりますが、「開業届」の控えを求められるケースが多いです。つまり、開業届をし提出しなければ、「屋号」のついた銀行口座を作成することができません。
個人用の口座を事業用の口座として使用しても問題ないですが、事業用とプライベートの口座が別になっていたほうが見栄えが良く経理作業も効率化されます。
屋号自体も名乗れることで社会的な信用も増します。
なにより、せっかく個人事業主やフリーランスとして独立した(する)のであれば、屋号を名乗っていくのをおすすめします。
開業メリット3:クレジットカード審査対策
個人事業主やフリーランスになるとクレジットカードやローンの審査に通りにくくなると言われています。事業用のクレジットカードを作るにしても、個人のクレジットカードを作るにしても、少しでも審査が通りやすくなるように工夫したいところです。
日頃から支払いに遅延がない、固定電話を持つなども大切ですが、開業届を税務署に提出しているかという点も、社会的信用につながります。
開業メリット4:職業の証明
高額な買い物や、何かしらの手続きを行う際に職業の証明を求められるケースがあります。会社員は、社員証や、会社で在職証明書を発行してもらうことができます。
しかし、個人事業主の場合は、「開業届」の控えを提出するように言われるケースがあります。書類を求める相手にもよりますが、「開業届」は職業を証明する書類になることも多くあります。
開業届にまつわる噂(デメリット?)
開業届を提出することによってデメリットがあるのでは?という噂が、まことしやかにささやかれているようですね。開業届は、独立にあたって必要な手続きですので、出さなくてよい、というものではりませんが、念の為噂に上がる点をみてみましょう!
・失業手当がもらえなくなることもある
失業手当とは、名前の通り「失業」した人がもらえる手当です。「開業届」を提出するということは、仕事があるとみなされて、「失業している」とは言えない為に失業手当がもらえなくなることが多い…という噂があるようですが、こちらは個人の状況によって異なります。
この事例に該当するのは、元々会社員で、失業手当を受給しながらフリーランスの準備をしよう、と考えている場合などですね。
開業届を提出してしまうと、上述の理由から失業手当の受給資格を失い、場合によっては不正受給扱いになってしまいますので注意が必要です。
逆に、フリーランスとして働く選択肢のみの場合は、あまり気にしなくてはよいでしょう。
・扶養に入れないことがある
夫の扶養に入っている妻が起業する場合などは、夫の扶養から抜けなければならないこともあります。夫が加入している「健康保険組合」の決まりによりますので、事前に確認が必要です。
妻が自営業の場合は、「年収が一定額を超えていなければ扶養に入れる」ところで、「自営業として起業した時点で扶養に入れない」ところがあります。保険組合によって異なりますので、扶養に入れる条件を確認するとよいでしょう。
・支払う税金が増えるということはない
開業届を出すことによって、支払う税金が増えるという認識をされている方を時々見かけます。
これをデメリットとして挙げられることもありますが、税金が増えることはありません。開業届の提出にかかわらず、収入があれば税金を支払わなければなりません。支払わなけば「脱税」になります。手続きは、必ず正しく行いましょう。
開業届の注意点
開業届には注意点もあります。
前述しましたが現在、配偶者の方の扶養に入っている方や、失業手当の受給のを検討している方は特に注意しましょう。もし配偶者の不要に入ってる場合は、開業届を出すことで扶養から外れる可能性があります。会社の健康保険組合によっては以下の2つのケースがあるため、気になる方は確認しましょう。
・年収が一定額を超えていなければ、自営業でも扶養に入れる
・自営業として起業した時点で扶養から外れる
扶養に入っていると健康保険料を支払う必要がありませんが、扶養から外れた場合は保険料を納付する必要があります。
また、開業届を提出すると、失業手当がもらえなくなります。
これは、開業届が事業主として事業を開始したお知らせであるため、「仕事を探している状態」ではなくなるためです。
失業手当の受給予定がある方は、注意しましょう!
開業届はいつまでに提出するべき?
・開業日から1ヶ月以内に管轄の税務署へ
開業届の提出は「開業日」から1ヶ月以内に管轄の税務署へ行います。
重複しますが、開業届は提出していなくても、提出が遅れても罰則はありません。
すでに1ヶ月以上経過している方は早めに提出しましょう。
・開業日のタイミングは自己判断
開業届を提出する時に「開業日」はいつかを迷う人も多いです。法的に決まっているルールはなく「今日を開業日にする」と決めた日が開業日です。
初めて収入があった日を開業日とする人もいますし、事業を始めようと初めて経費を支払った日や、名刺が完成した日を開業日にする人など、本当に様々です。
開業すると心に決めて準備を始めた日でも問題ありません。
本人が「開業した」と決めた日が「開業日」です。自分のタイミングで決めましょう。
開業届はどこで入手できる?
前述したように「個人事業の開廃業届出書」は、国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署で受け取ることもできます。
A4用紙1枚ですので記入欄も多くありません。
印刷して記入し、郵送で提出ができます。
自宅で印刷できない方は、 最寄りの税務署に行けば、用紙がおいてあります。
印鑑や身分証を持参すれば、その場で手続きすることもできます。
先述した通り、提出期限、原則として開業してから1か月以内。
開業届に必要事項を記入し、捺印した上で提出しましょう。
開業届の書き方
開業届には、以下の項目があります。
項目ごとにそれぞれ説明していくので、実際の用紙をお手元にご準備の上、確認していきましょう。
・税務署長
左上に下線と税務署長と書かれているスペースがあります。
下線の上には【管轄の税務署名】を記入します。
例えば、渋谷税務署が管轄であれば「渋谷」と記入します。
・提出日
税務署長の欄の下に「提出」と書かれた日付を記入する欄があります。
提出する日を記入しましょう。郵送の場合は、ポストに投函する日を記入します。
・納税地
個人事業主やフリーランスの場合は基本的には自宅の住所を記載します。
自宅以外に事務所や店舗がある場合は、事務所や店舗の住所を納税地にしてもよいしょう。
その場合は、納税地の下に自宅の住所も記入が必要なので、忘れずに記載しましょう。
・名前・生年月日・個人番号
個人情報です。名前と生年月日、個人番号を記入しましょう。
名前の欄には押印も必要なので、忘れないように注意しましょう。
・職業
事業として行う仕事を簡単に記載しましょう。例えば、デザイナー、コンサルタント、飲食業などです。複数の事業がある場合は複数書いても問題ありません。
・屋号
店舗名など、屋号を設定する場合に記載しましょう。
屋号を設定しない方は記入しなくてもそのまま提出できます。
・届出の区分
左上の「開業」に○をつけましょう。
・所得の種類
「9事業所得」に○をつけます。
・開業・廃業等日
自分で決めた「開業日」を記入しましょう。
・開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
「青色申告承認申請書」を一緒に提出する場合は、1段目の「有」に○をつけます。
無い場合は「無」に○をつけましょう。
消費税に関する「課税事業者選択届出書」を提出する場合は、2段目も「有」に○をつけます。
「課税事業者選択届出書」は、消費税を免税から課税に変えたい方が提出する書類です。
起業直後の消費税は免税ですので、基本的には「無」に○をつけます。
・事業の概要
仕事内容を具体的に記載します。
「ホームページのデザイン」「ラーメン屋の経営」など、短くまとまっていても問題ありません。
個人事業主やフリーランスの開業届は、提出する決まりになっていますので、開業後1ヶ月以内に提出しましょう。
自宅でダウンロードし、郵送で提出ができますので、本記事を参考に提出してみてください。
青色承認申請書
開業届に合わせて、青色承認申請書の提出もしておくと良いでしょう。確定申告には、2種類あります。青色申告と白色申告があります。
青色申告は少し手間がかかりますが、優遇措置があり、税金の納付額が少なくなることもあります。青色承認申請書は開業から2ヶ月以内に提出しましょう。遅れてしまうと当該年度は青色申告ができなくなってしまうので注意が必要です。
また、開業届が提出されていないと青色申告はできません。この点についても十分に注意しましょう。
開業届の提出期限は、開業日から1ヶ月以内を原則としています。